マネジャーは英語の「manager」の発音を日本語にしたもので、日本語表記ですとマネジャー、マネージャーとありますが、どちらも意味は同じです。
役職としてのマネジャーと、実際の職務が一致していないケースもままありますが、マネジャーの本来の意味は、企業や組織においてマネジメントを行う役割ということになります。
マネジメントという言葉は、元々は経営学者のピーター・F・ドラッカーが1973年に刊行した著書『マネジメント』で定義・広めた言葉です。日本では、映画化もされたベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』をきっかけに有名になりました。
今回は、より実務で使いやすい形で、ミドルマネジャーはどんな役割が求められ、その実行のためにどんなマインドセットやマネジメントスキルを身につける必要があるのか、について解説します。
マネジャーに求められる役割
そもそも、メンバーとは異なる「マネジャーの役割」とは何なのでしょうか?役割としては、主に下記のようなものがあります。
まずは、成果をあげるためのチームの具体的な目標を設定し、それをメンバーに共有し認識してもらわなければなりません。目標が明確になることで、メンバー全員が同じゴールを向けるようになり、チームワークの発揮や協力関係の基礎となります。
チーム全体の目標を設定した後は、その目標に紐づく形で、メンバー一人ひとりの目標も設定していきます。
(参考)目標設定のやり方|気をつけたいポイント
プロジェクトや各種業務の進捗状況を把握し、管理・調整し、プロジェクトを進めていかなければなりません。また、メンバーのスキルや強み弱み、志向性や現在の仕事の状況を見極め、チームの中で最適な形で仕事を振り分ける必要があります。
企業にとって人材は重要な経営資源です。メンバー一人ひとりの成長は、チームや企業の発展に直接つながります。そのため、メンバーや部下の教育・育成も行わなければなりません。部下の状況を把握して声をかける、適切なタイミングで助言をする、場合によっては自ら率先して手本を示すなど、メンバーが成長できるように導く必要があります。
(参考)「成長実感」とは何か?|能力・スキルの向上を実感させるマネジメント方法
仕事を通じたコミュニケーションによって、メンバーを動機づけることもマネジャーの役割です。進捗や行動に対して褒めたり、認めることで、メンバーの仕事へのモチベーションを高めることが求められます。
(参考)承認・称賛とは?|1on1でも重要な承認と称賛の使い方
マネジャーには責任が求められます。メンバーの責任も、マネジャーが最終的な責任を持つことになります。
最終的な意思決定者の役割が求められます。マネジャーが意思決定できなければ、業務は停滞し、メンバーは迷い、チームのパフォーマンスは低下してしまいます。マネジメントが行う意思決定は、組織の将来を左右することもある重要なものです。
マネジャーは、一定の期間であらかじめ決められた評価指標に基づき、メンバーを評価する必要があります。人事考課の意味合いと同時に、良いところ、改善すべきところをフィードバックします。また、メンバーが組織の目標や自分の目標に対する評価指標を認識していることで、マネジャーの管理ではなく、メンバーそれぞれが自己管理を行うことができるようになります。
(参考)評価に対するメンバーの納得感を高めるマネジメント方法|評価のマネジメント
特に、古い時代のマネジメントしか知らない、10年以上同じマネジメントをしているという方は、業務遂行や評価に篇重しており、動機づけや育成に対する意識が弱い傾向が見られるので注意してください。マネジメントするメンバーの価値観や労働観は大きく変化しており、上記をバランスよく実行しなければ通用しなくなっています。
マネジャーが持つべきマインドセット
役割については大枠理解できたと思います。
では、役割を遂行するにあたって、マネジャーはどういったマインドセット、姿勢で臨めばよいのでしょうか。
組織で成果を出す
多くのマネジャーは、個人としての成果や能力を認められマネジャーになります。
個人として能力が高いというのはもちろんなのですが、個人でやれることには限界があります。「組織で成果を出す」という考えにシフトし、そのために自らの行動を変えていく必要があります。
メンバーや仕事に対する真摯な姿勢、リスペクト
成果を出す力だけでは、実はメンバーにとってあまり尊敬や信頼の対象になりません。例えば、どんなに仕事の能力が高かろうと、メンバーに対するリスペクトがないマネジャーへの評価は低いものです。これでは組織として見た場合に、マネジャーの役割を果たせているとは言えません。
チームをこうしたい、成長してほしいという想いであったり、メンバーに対する人としてのリスペクト。私はこうしたい、顧客や社会に貢献したい、という仕事に対する想い。こうした私心以外の考えや姿勢が、良きマネジャーには求められます。
強い責任感
プロダクトジェクトやチーム、メンバーに関する課題・問題を自分ゴトとして捉え、立ち向かう姿勢が求められます。問題から逃げたり放置してはいけません。
マネジャーに必要なマネジメントスキル|基本的な7つのスキル
マネジャーとしての役割を果たしていくためには、様々なスキルが必要になります。押さえておかなければならない基本的なスキルを紹介します。
現在の職務における仕事のスキル
自身の仕事に密着した専門性、スキルを高いレベルで備えていることは大前提となります。マネジャーになる方は、このスキルについてはクリアしているケースが多いです。
テクニカル・スキル
ロジカルシンキングや、数値を使った分析力、人前で分かりやすく話す能力、基本的なPC操作のような基本的なスキルは、会社が変わっても必要なポータブルスキルであり、欠けていると大きなマイナスになります。
例えば、部下がやればいいという姿勢で、いつまでもEXCELがまともに使えない年配上司や、人前でうまく話すことができない上司は、メンバーから冷ややかな目で見られることはあっても、多くの場合尊敬されることはないでしょう。基本的なビジネススキルを疎かにしてはいけません。
コミュニケーション・スキル
コミュニケーションが重要と言うと、メンバーとの接点を多く持つことや、メンバーからの不満点のヒアリングなどに着目してしまいがちですが、そうではありません。メンバーの要求を受け止めつつ、こちらの要求を理解させることが重要です。マネジメントは、一方的に相手に考えを押し付けるだけではなく、情報を共有しながらメンバーに理解をさせ、動機づけモチベートし、メンバーを動かすということが必要です。
また、チームをどういう状態に持っていきたいのかを語れず、実務に関する細かい話ばかりしていては、メンバーはついてきません。
(参考)効果的な部下との対話の方法
リーダーシップ、影響力
いちメンバーではあまり求められなかったヒューマンスキルは、マネジャーになると重要になります。責任範囲が増えることで、周りを巻き込んで目標達成に導く必要がでてきます。また、組織が求めること、もしくは上司が求めることと現場のギャップを調整する能力も求められます。
(参考)部下や関係者の協力を得てチームを成功に導く方法
(参考)マネジャーに必要なスキルとしてのリーダーシップ
意思決定力
マネジメントが行う意思決定は、さまざまなステークホルダーに影響を与える重要なものもあります。重要な判断に迫られても適切な判断をくだすことができる。判断しなければならない時に、逃げたり先延ばししたりしない意思決定力が求められます。単に与えられた選択肢から判断するだけでなく、現状を理解、分析し、その結果として判断を下す能力が必要です。
分析力・問題解決能力
マネジメントする組織の規模が大きくなればなるほど、さまざまな問題が発生するため、課題に対する的確な分析力が求められ、さらにその問題を解決する策を導き出す問題解決能力が求められます。課題やリスクを理解し、どの様に解決していくのか判断し推進することが求められます。
管理・計画能力
組織で成果を上げるためには、個人で成果を上げることと異なり、複数の人が関わり複雑性が高くなります。目標達成のために必要なリソースや期間を計画しなければなりません。そして、その計画が着実に遂行されるよう、プロジェクトを管理する必要があります。
基本を押さえながら自分の強みを活かしたマネジメントを
いかがでしたでしょうか?
全てを完璧にできる人は中々おらず、多くの人は得手不得手があると思います。ただし、どれか一つだけ極端にできない、やっていないという状態は避けなければなりません。マネジメントは様々なスキルを使い分けていかなければ上手く回らないため、まったく実行できていない部分があるとそこが足かせとなり、効果的なマネジメントが行えません。
苦手な分野については、60点、70点取れるよう自己研鑽し、意識して取り組んでいきましょう。その上で、強みをベースに、自分なりのマネジメントを実行していくことが重要です。