企業の経営者や人事とお話ししていて良く出る話題のひとつに、「うちの管理職はプレイヤーとしては優秀なんだけど、マネジメントができない」というものがあります。
大半の企業では、プレイヤーとして優秀だった人が、マネジャーに上がり、マネジャーになって初めてマネジメントを行うことになります。
しかし、プレイヤーとして業績を上げることと、マネジメントは異なるスキルのため、優秀だったはずのプレイヤーが、マネジャーとしてはうまく機能できないということが起こります。
特に最近は、「成長とか求めてないです」「マネジャーになりたくない」という若手が増えて、より一層マネジメントを難しくしています。
今回は、成長したくないメンバーとどう向き合うか、その対処法について解説します。
マネジャーは部下の育成・マネジメントを期待されている
日本の人事部が発行する人事白書調査レポートによると、ミドルマネジャーに期待する役割1位も、果たせていない役割1位も「部下の育成・マネジメント」となっています。
マネジャーに期待する役割は「部下の育成・マネジメント」「組織の活性化・モチベーションの維持向上」が上位にあり、マネジメントへの期待が最も大きいことが分かります。
一方で、マネジャーが果たせていない役割の1位、2位は「部下の育成・マネジメント」「組織の活性化・モチベーションの維持向上」であり、全体の6割以上を占めています。
マネジャーはマネジメントを期待されているのに、マネジメントができていない現状が見てとれます。


プレイヤーとして優秀だからこそ生じる認識ギャップ|仕事の前提が異なるメンバーもいる
プレイヤーとして活躍していたマネジャーは、「仕事は頑張るのが当たり前」「仕事を通じて成長したい」と多かれ少なかれ誰もが思っていると考えがちです。
自分がそういった考えで結果を出し成功してきたからこそ、それが正しいと思っています。
しかし、現実には「出世したくない」「成長したいなんて考えていない」「仕事はそこそこにしたい」「既に出世コースから外れているので頑張っても仕方がない」と考える部下もいます。
特に、多くの若者にとって、仕事中心に頑張ることは当たり前ではなくなっています。
そんな時、プレイヤーとして優秀だったマネジャーは、こうした考えを否定し、メンバーに対して自分の考えをつい語ってしまいます。
ですが、多様な考え方を持ったメンバーをマネジメントしなければならない令和の時代において、それではマネジャーは務まりません。
相手を理解するコミュニケーションを飛ばしてしまったその訴えは、メンバーには響きません。
そこで重要になるのが、相手の意見をいったん受け入れる、考えている背景を理解する姿勢です。
趣味や好きなことに時間を使うことを良しとする人や、仕事以外で収入を得ている人も増えています。副業の方が本業より稼いでいるサラリーマンも珍しくなくなりました。
多様な考え方のメンバーがいて当たり前の中で、マネジメントしていくことを前提にしなければいけない時代になっているのです。
マネジャーが陥りがちな失敗|誰もが成果を出したいと思っているという思い込み
マネジャーを目指そう、トップセールスを目指そう、これができたらどこでも通用するようになる、そんな語り口でモチベートしようとした経験はないでしょうか?
そして、それが響いていないメンバーが少なからずいる。
そんな時、メンバーはこう考えています。
「成長とか、上を目指すとか興味ないです」「与えられた責任は果たしますけど」
中には直接マネジャーに本心を言ってくれるメンバーもいるでしょう。
それに対してマネジャーは、良かれと思って「もったいない」「それじゃダメだよ」と否定したり、仕事のやりがいや、メンバーにとってもメリットがあるといった形で、自分の考えを力説し、なんとか興味を持たせようとします。
しかし、人の価値観は簡単に変わりません。人は自ら変わろうとしない限り変わらない。
そこで無理に変えようとしても、それは徒労に終わりますし、関係性を損なってしまいます。
否定ではなく受け止めるところからはじめる|同意しなくていい
実際、上で挙げたようなメンバーの考えを歓迎できるマネジャーはいないと思います。
それは決して間違っていません。
しかし、受け止める姿勢がないマネジャーにメンバーは心を開きません。同意できなくても受け止めるしかないのです。
まずは、自分の考えを伝える前に、メンバーはどう考えているのか聞いてみる。
相手の価値観を理解する、受け止める。賛同しなくていい。
そんな人として関係性を築くことを疎かにせずに、取り組んでみてください。
そして、背景を知った上で、責任を果たすことを求めていく。受け止めた上で、義務として責任を果たすことはしっかり求めていきます。
中長期的には、会話を重ねていく中で他の視点を伝えていったり、仕事で結果を重ねていく中でその人なりのやりがいを感じてもらう等で少しずつ考え方の変化を促していきましょう。
それが、ひとりの大人に対してマネジャーができる精一杯だと思います。
いかがでしたでしょうか?
自分と異なる考え方のメンバーがいた際に、理解できないがために否定してしまったり、無理やり変えようとしたりして、関係性を悪化させてしまい困っているマネジャーは多いのではないでしょうか。
マネジャーは万能ではありませんし、ひとりの大人であるメンバーの考えはそう簡単には変わりません。
仕事に前向きでないメンバーがいた際には、信頼関係を構築し、ゆっくりで構わないので、メンバーが仕事を通じて成長を感じている、やりがいを感じている状態を目指していきましょう。